エヴァンゲリオン学園
第弐拾伍話
花火大会その2
まだ空は夕暮れ時、ケンスケは浴衣姿の美女を厳選しシャッターを押しつづける。
「なんや?何かやっとるで?」
広場にステージが作られておりイベントがおこなわれていた。お祭り好きのトウジは興味津々で見に行く事にした。
「なになに?ラムネ早飲み大会。よっしゃあ!でたる早飲み」
早飲みの自信があるトウジは一瞬で参加を決めた。
「あら?アンタ達も来てたの」
背中からいつもの聞きなれた声振り向いてみると浴衣姿にビールをグビグビ、ミサトが立っていた。
「ミサト先生、来ていたんですか」
シンジは美女が立ちながらビールと呆れていたが、これがミサトの持ち味である。
「ええ、リツコと一緒に来たのよ」
「えっ!リツコ先生も来ているんですか?」
ケンスケは目の色を変えた、ミサトの浴衣姿にビールを飲んで顔が赤かったので大人の色気が出ておりシャッターをきりまくっていた。そしてリツコが来ているとなると当然に、浴衣だと頭に浮かぶ。
「あっちで金魚すくいしてるわ」
「そうですか。では相田ケンスケ、リツコ先生に挨拶してきます」
ダッシュでリツコの元に走った、撮影を兼ねた挨拶をしに。
「じゃあワシはエントリーしてくるからな」
「あら、鈴原君もでるの?」
「早飲みは得意やし、タダで飲めるし一石二鳥儲けもんや」
ふとアスカはミサトの言葉が頭にひっかかった。
「も、ってなんですか?ミサト先生も?」
「当ったりー!私も出るわ。なんてたって優勝賞金五万円よ」
「「「「「五万円!!!」」」」」
シンジ達は驚いた、五万円は中学生にとっては大金である。トウジは俄然闘志が沸いてきた。
「五万かそれだけあったら、うまいもん食い放題や」
「ふふ、甘いわね鈴原君。このミサト、学生時代は『早飲みのミサト』と呼ばれ不敗神話を作ったのよ。大学ではその伝説が今でも語り継がれているわ」
余裕の笑みを浮かべトウジを戦意喪失にさせる、だがトウジは鼻息を荒くさせコブシを握り締めた。
「そんな話しもう昔の事や、これからはワシが伝説を作ったる。ミサトセンセ勝負や」
ビシッと指差し闘志をあらわにさせる、ミサトは余裕で腕を組みながら笑う。
「ふっ女王の実力を見せてあげるわ」
2人の激しい火花が散る。
「シンジ君は出ないの?」
ずっとシンジの隣にいたマナが尋ねたが、2人に気を取られていて素っ気無い返事を返すだけだった。
「えっ僕?無理だよ。早飲みって得意じゃないんだ」
「ふーん、それじゃあ私でようかな」
「え?マナが」
「私これでも自信があるんだ。ミサト先生や鈴原君に敵わなくても3位に入賞すれば一万円なのよ」
マナは自信たっぷりに腕まくりをした。ちなみに2位は三万円である。
「アスカもでない?」
「私?」
マナに不意に言われて驚いた。出場する気など無かったからである。
「そうよ・・・・」
マナはアスカに耳元で呟いた。
「勝負してみない?」
「?」
一瞬なんの事だか理解できなかった。早飲みで勝負とは。
「だから早飲みで勝負して勝ったほうが、シンジ君の隣で一緒に花火を見るっての」
「・・・・・」
アスカは考えた。食べる事は得意だが早く飲むことは、ちょっと自信が無かった。しかし断れば無条件で負けになる、そしたら答えは1つしかない。
「わかったわ」
「そうこなくっちゃ」
勝負してみなければわからない。アスカは負けるなら頑張って負ける事を選ぶ、だが勝ったら嬉しいかぎりである。
「アスカもでるからね、それじゃあエントリーしに行きましょう」
「うん」
トウジとアスカとマナはエントリーしに本部に向かう。後に残されたのはシンジ、ヒカリとエントリー済みのミサトである。
「碇君、アスカ大丈夫なの?」
「何が?」
「アスカずいぶんと買い食いしたんでしょう?」
ヒカリはアスカのお腹を心配した。
「大丈夫じゃないかな。入るところは別っていつも言っているから」
「・・・・・」
シンジはのほほんとしていた、心配していない。ヒカリは少し呆れたが互いに知っている2人なら安心と思った。
「教え子が挑戦を挑んでくるなんて、教師として勝たなければね」
ミサトは本番前の練習としてビールを一気飲み。
「うまい!」
「教師ではなくて賞金の為に勝たなければならないでしょう?」
「う!」
シンジはミサトの口から教師の言葉がウソである事がわかる。もちろんヒカリも同じであった。
「シンちゃん、教師として勝つのよ。そのためなら賞金なんて欲しくは無いわ」
「それじゃあ、おごってくれますか?」
「う!・・・」
一瞬たじろき、言葉に詰まる。額には汗、次の言葉を必死に探していた。シンジはニッコリと笑っており、次の言葉を期待していた。
「おごってくれます」
「何の事かしらん」
すっとぼけた。2人はやっぱり『ミサト先生だ』と改めて認識した。
それからすぐにラムネ早飲み大会が開催された。まずは予選である。第1予選は5人ずつでおこなわれ1位が次の第2次予選に通過、そこでも1位が決勝に進めるのである。
「まったくビールの早飲みが良かったわ」
ミサトは愚痴を言いながらも早かったいつもの練習?の成果であろうか、第1次第2次ともにトップの速さで通過である。
「まだまだ、賞金でビールをっと」
「根性みせたる!」
自信があると豪語していたトウジはミサトに次ぐ早さで決勝進出。
「美味いもん、食べ放題や」
「ふうー、ゲップ、はしたないかな」
マナは女性ながら決勝進出、やはりアスカとの勝負なのだろうか?気合が入っている。
「さあアスカ勝負よ」
「うっぷ・・・・苦しい・・・・」
決勝に2人の女性が進出したその1人がアスカである。買い食いでお腹が膨れていたものの、シンジと一緒に花火を見たいが為に頑張る少女である。
「マナ、負けないわ」
後3人決勝進出者がいたが割愛しても支障がない。
ステージには決勝進出者6人がラムネを前に立っていた。ミサト、トウジ、マナは自信たっぷりに笑みがこぼれていたが、アスカは不安であった。
(ミサト先生や鈴原君はともかく、マナには勝ちたい)
「ねえ碇君、誰が勝つかな」
「そうだね。ミサト先生かトウジかな」
シンジとヒカリは客席で観戦していた。ちなみにケンスケはまだリツコを撮っていた。リツコは金魚すくいに執拗に集中していた、実験体が手に入るからである。
スタートの合図が出され一斉にラムネを手に取る。ミサトとトウジがやはり早かった、ビンの中身はどんどんと無くなっていく。
(楽勝楽勝!五万円は私のものね)
(流石ミサトセンセや、だがラストスパートが勝負や)
(やっぱり2人には負けるわね。でもアスカには勝つわよ)
(うっぷ苦しい・・・・ダメかも・・・でも負けたくない)
トントントントントン!
次々の飲み終わり置かれていく空になったビン。
「やったわ!優勝よん!」
ミサトは両手を上げて体全体で喜んだ、不敗神話更新である。
「くー、流石ミサトセンセや、ワシの完敗や」
ちょっとの差で2位のトウジ、負けはしたものの清々しい顔をしていた。
「ふうーアスカ私の勝ちね」
3位マナ、勝負に勝ち安心して息をおもいっきり吐き緊張を解き放った。
「・・・・・・」
4位アスカ、頑張ったのだが後少しの差で負けた。やはり先ほどの買い食いが響いたのであろうか、お腹をさすっていた。
そして入賞者は賞金をもらい、アスカは参加賞として図書券をもらった。
「私のクラスが上位を独占するなんて、先生は嬉しいわ」
「今度は負けへんで」
「これで独占しても嬉しくないですね」
「・・・・」
勝負はマナの勝ちによりシンジの隣はマナの指定席となり、アスカはヒカリの横になった。打ち上げの時間になり、斜面にシートを敷いて空を見上げた。
ドーンドーンドーン!!!
巨大な音に巨大な花火、辺りからは歓声が上がり、月ともう1つの空の明かりが皆を照らした。
「シンジ君、綺麗ね」
「うん、毎年色んな花火がでるから、楽しみなんだ」
マナはここぞとばかりに話しかけて、デートを楽しんだ。
「ほらアスカ、すごーい!あんなに大きい」
「うん・・・」
ヒカリは興奮していた、アスカに話しては空を見上げて歓声を上げる。アスカは空を見ても楽しめなかった。隣の2人が気になっていた。
「・・・・・」
話し声が聞こえるが花火の音で聞き取れない。負けた悔しさと食べ過ぎた苦しさで、泣きたい気分だった。
(買い食いしすぎちゃったかな・・・・・)
花火も終わり、皆は話しながら帰り道を共にした。マナはシンジと2人で喋っていた。勝負は終わりアスカが隣にいてもいいのだが、ヒカリは花火に感動しており話しつづけてそれを聴く役目となり、ただ相槌を返すだけであった。トウジは賞金で喜び、ケンスケは写真で喜んでいた。
「「「「「「それじゃあ」」」」」」
皆それぞれ自宅の道にわかれて帰っていった。
「・・・・」
「・・・・」
シンジとアスカは無言のまま帰り道を歩いていた。アスカはまだ苦しいのかお腹に手を当てていた。
「大丈夫?」
「え?・・・・」
シンジは静寂を破るように発した。アスカは不意の事で言葉に詰まった。
「苦しいんだろ。あれだけ食べたり飲んだんじゃ、大食いのアスカでも苦しくなるよな」
「もう大食いってなによ!」
笑うシンジにアスカは頬を膨らませながら右手を上げ怒った。
「ははごめん、ホラ」
「シンちゃん?」
アスカの前にしゃがむと後ろを振りかえった。
「歩くのきついんだろ、おぶるよ」
「でも・・・」
「誰も見ていないよ」
「・・・うん!」
アスカをおぶると立ちあがり歩き出した。
「ごめんね。重いでしょ」
「うん」
コン!
返事と同時にコブシを作り軽く頭を叩いた。
「一言多いでしょ」
「ただ返事しただけだろ」
「そういうときは否定するものなの」
「わかりました。アスカ憶えてる?昔もおぶって帰った事があったね」
シンジは星を見ながら、昔の事を思い出した。
「うん、私が同じように食べ過ぎちゃったんだよね」
「アスカがダダをこねて買って買っててねだるから、惣流のおじさんはついつい買い与えたんだよね」
「うん」
「それで結局は僕がおぶって帰ったんだよね」
「でもシンちゃんが僕がおぶるって言ったじゃない」
アスカは笑いシンジの優しさに痛みが和らぐ感じがしていた。
「その頃に比べたら重くなったよ」
コン!
「いったー」
「言わないの」
「4位はおしかったね」
「うん。でもいいかな」
「どうして?」
シンジは賞金と図書券でどうしていいのかわからなかった。
「ふふ・・・秘密」
「はあ?」
アスカはギュッとしがみ付くと、今この時を楽しんだ。花火を見た時よりよっぽど楽しい時間である。
「食べ過ぎるのもいいかな」
「ん、なに?」
花火大会なのに早飲み大会がメインになってしまいました(jun16の執筆力の無さだな)
久々にミサト先生が登場、お得意の技で優勝!この人は・・・飲むことしか頭に無いです(爆)
こんな連載小説でも飽きずに読んでくれた方々に感謝します。
第弐拾四話 花火大会 第弐拾六話 the END of 夏休み
エヴァンゲリオン学園:第弐拾伍話 花火大会その2