エヴァンゲリオン学園

第参話

席替え

 ホームルームの時間、まだ教室はざわめいていた。

 パンパン!

「はいはい、みんな静かに」

 ミサトは手をたたき、静かにさせる。教室はざわめきがうそのように静かになった。

「霧島さんの席はと・・・」

 だか開いている席は一つしかない。一番後ろの窓側である。その隣はシンジだった、ミサトはにこやかに席を指差す。

「じゃあ、シンジ君の隣ね」

「ええ、ミサト先生、席替えしようよ」

 クラスの男子から一斉に声が上がる。

「霧島さんも来たことだし、全然席替えをしていなかったから、やろうよ!」

「よし、わかったわ一時間目にするわよ」

 ミサトは一時間目の授業担当であるから問題はない。男子は喜んだ、こういうところでミサトの人気はあがっている。

「じゃあ、ちょっち待っていてね。準備してくるから、霧島さんはシンちゃんの隣に座っていてね」

「ミサト先生、その呼び方はやめてください」

「あら、どうして?いいじゃない」

 ミサトはそう言うと、教室を出ていった。

(なんかイヤな予感がするな。あの呼び名で呼ぶと悪いことが起きるからな)

 シンジが考えているとマナがやってきて隣に座った。

「あっあの朝はごめん」

 シンジは恥ずかしそうに、マナを見た。

 ニコ!

「いいわよ、事故だったから。私こそごめんね」

 マナは気にしていないらしく、笑顔でシンジにかえした。

「シンジ君て、苗字はなんていうの?」

「碇、碇シンジだよ。霧島さんはどうして転校してきたの?」

「マナでいいわよ。お父さんの都合で、越して来たんだ。よろしくねシンジ君」

「え・・うん」

 にこやかに名前で呼ばれおもわず、赤らめたがその光景をクラスの男子は殺気の目で見ていた。

(シンジのやつ・・)

(不幸になれ・・・)

(名前で呼ばれてーー)

(霧島さんの隣は俺だー)

 男子に野望が渦巻いていた。そんな中、一人の女の子もシンジを見ていた。

 アスカである。

(シンちゃんたら、デレデレして)

 ガラ!

 ミサトが授業と席替えの準備をして戻ってきた。手にはDISKを持っている。

「はーい、それじゃ席替えするわよ」

 DISKを教壇の端末にセットする。

 ピ!

 するとクラス一人一人の端末に名前入力が表示される。

「いつもと同じやり方よ。そこに自分の名前を入力して、みんな入力したら一気にシャッフルするから自分がいいと思ったらENTERキーを押してね。そこで席が決まっていくから」

 ミサトの説明が終わり自分の名前を入力する。

「入力したわね。それじゃあスイッチON!」

 ピピピピピピ!

 画面に席が表示されその上を名前が高速で移動している。

 カチ!

 生徒がENTERキーを押していき、次々に席が決定する。

なにー!!

 男子から叫びに聞こえる声があがる。マナの席は今の席、一番後ろの窓側だった。その隣はなんとまた同じのシンジであった。

 シンジの隣にアスカが決まっている。男子の悔しがる声がクラスに木霊した。

「全員決まったわね。移動して」

 ミサトはニヤつき、シンジを見ていた。

「シンジ君、またとなりだね」

 マナは満面の笑みを浮かべた、シンジは赤くなる。

「そうだね・・・」

(どうして同じになるんだ?同じ席になるはずないのに・・・これはミサト先生の陰謀だーー

 シンジは心の中で叫んでいた。隣にアスカが席を持ってきた。

「シンジ君、よろしくね」

「あ、アスカか」

「なにそれ」

 適当にあしらわれ、アスカはふくれた。マナを見て挨拶をする。

「霧島さん、惣流・アスカ・ラングレーよ、よろしくね」

 だが言い方には朝の怒りがこもっていた。

「マナでいいわよ。惣流さん、それに朝の事気にしてないから、怒らなくていいわよ」

 アスカは見透かされ、少し赤くなった。

「わかったわ、私もアスカでいいわよ。よろしくねマナ」

「ふふ、よろしくアスカ」

 互いに笑い合う。どうやら仲良くなったようだ。シンジは一人ため息をついていた。

(よかったー、アスカとマナが仲良くなって一安心だ)

 席移しも終わり授業に入った。

 ミサトは社会担当である。面白く、わかりやすいと生徒には評判でテストの平均点も高い。

・・・

・・・

・・・

・・・

 キーンコーン!カーンコーン!!

「よし!ここまで」

「起立、礼」

 委員長が号令をし、ミサトが出て行くと同時にクラスの男女がマナの席に寄ってきた。そして質問攻撃をうける。家のことや、彼氏はいるの、お友達になりましょう、付き合って下さい。など休み時間は質問で過ぎていった。

 シンジは休み時間、トウジ、ケンスケと一緒にトイレにきていた。

「あーあシンジがうらやましいよ」

「どうして?」

「だってよ、左隣に可愛い霧島さんに、右に学校一の美女、惣流がいるんだぜ。うらやましい以外ないよ」

「そうや、センセは二人を独り占めしてるようなもんや、まったく両手に華やのー」 

 トウジとケンスケはため息をついていたがシンジは意味がわからなかった。

(なぜだろう、アスカは幼なじみだし、マナは可愛いけど)

 シンジの鈍感はすごかった。

・・・

・・・

・・・

・・・

・・・

・・・

 時間も過ぎて昼休み、弁当の時間になった。

「シンジ、パン買いに行こうぜ」

「わかった」

 シンジ、ドウジ、ケンスケは購買部に走った。アスカは鞄から弁当を取り出し、前の席にヒカリが向かい合って座った。

「あれ霧島さん、お弁当は?一緒に食べよう」

 ヒカリがマナに質問した。

「今日バタバタしてたから、持ってきてないの。パンを買うつもりなの」

「それなら急がないと、無くなっちゃうよ」

「うん、行ってくる」

 マナが教室を出るとシンジ達が戻ってきた。

「あれ?どこ行くの」

「パンを買いに」

「もう売り切れたよ」

「えー・・・どうしよう」

 マナは困った。昼食を抜いてもいいのだが、今日は急いでいて朝食も抜いてきたから、お腹がすいていた。

「分けてあげるよ」

「いいの?」

「いいよ、一緒に食べよう」

「ありがとう」

 シンジは自分の席に戻り、トウジとケンスケは椅子を持ってきて、座る。

「霧島さん、パン買えなかったんだ」

「でもシンジ君が分けてくれるって」

「碇君やさしいわね。鈴原も分けてやりなさいよ」

 ヒカリはトウジが沢山パンを持っているのを見た。

「えーなんでワシが・・」

「沢山持っているでしょう、霧島さん困っているから分けてあげなさい」

「分けてあげなさい」

 ヒカリは迫力のある顔である。トウジは圧倒された。

「しょうがないなーわけたる」

 しぶしぶ、一番小さいパンを渡した。

「はいこれ」

「ありがとう」

 マナは二人にお金を渡した。

「「「「「「いただきます!!!!!!」」」」」」

 モグモグ、モグモグ!

 食事中はヒカリやアスカがマナに質問をしていた。シンジ達は食べるのに夢中になっていた。

・・・

・・・

・・・

・・・

・・・

 楽しい昼休みも終わり、午後の授業にはいった。しかし午後は食事後とあって、クラスのみんなは眠たかったが、誰一人眠っていなかった。

「分解するとこうなります」

 教壇に立って授業をしているのは物理担当の赤木リツコである。ミサトとは学生時代からの親友であるが、性格は正反対でとても真面目であった。

 授業中にお喋りや、居眠りをして注意されたら、後で理科室に呼ばれ実験体にされると生徒は恐怖していた。そのため、リツコの時間は誰一人口を開かず、目を開けていた。

 そして緊張の五時間目が終わった。

「ふう、緊張したわ」

 シンジに事前にリツコのことを聞かされていたはマナは額に汗をかいていた。

「そうだね、僕でもいまだに緊張するよ」

・・・

 そして六時間目も過ぎ、帰りのホームルームだ。ミサトがやって来て連絡事などを伝える。

「それじゃあこれで、お終い!寄り道せずに帰るのよ」

 号令、生徒は部活に行く者、帰る者次々に教室を出て行く。

「シンジ、ケンスケ、ゲーセンによって行かんか?」

「いこうか」

「そうだね」

 トウジは大声で言ったのがまずかった。ヒカリが目を鋭くしトウジに詰め寄る。

「鈴原!あなた今日掃除当番でしょ!サボりは許さないわよ」

「おっおおう!スマン忘れとった」

「嘘、おっしゃい」

「ホンマやて!」

 本当は忘れていなかったが、見つかったときは大抵『忘れた』と言い訳が多い。

「スマンのー、シンジ、ケンスケ二人で行ってくれ」

「行けないのか、それならまた今度にしようか?それでいいだろシンジ」

「ああ、いいよ」

 3バカトリオは3人で行動することが多いので今日のゲームセンター行は中止になった。

「じゃあ俺は部室に行くから」

 ケンスケは二人に手を振り、所属している写真部に向かう。シンジは取り残されたが後ろから声がかかる。

「シンジ君、一緒に帰らない?」

「え?」

 振り向くとマナとアスカが鞄を持って立っていた。

「帰ろう」

「あっうん」

 マナに見つめられおもわず顔が赤くなった、その光景をアスカは嫉妬の目で見ていた。

「いこっ!」 (シンちゃん、なに赤くなっているのよ)

 アスカは早足で教室を出て行く、シンジとマナはそれに続いて教室をでた。


 リツコも先生役で登場しましたが、マッドな理科系担当は定番ですね。

 こんな連載小説でも飽きずに読んでくれた方々に感謝します。


第弐話 ウワサの転校生  第四話 下校

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