〜再び漆黒の闇〜
再びあまたの世界を繋ぐ漆黒の世界へと舞い戻る。腕の中には……生気のない女が一人。
(……夢か?)
刹那のようであり、しばしどこかを彷徨っていたような軽い疲労感もある。
最初にここに来たときと変わらない。女はぐったりとしたままだ。
下らない幻影を見せることもあるのだな、この闇は……。
今だ抱きしめたままの女を、男は荷物か何かを打ち捨てるように投げようとして……できなかった。
苦悶に歪む表情が次第に穏やかになり、ぎゅっと男の服を掴んで離さないのだ。
生気を失っていた相貌に生命の輝きが戻り、眠っている表情さえも麗しい。
(時を越えたか……私があの場に現れないという一つの道と……そうでない道が)
前者の道は、おそらく最後の力を使いここに逃げ込んだ姿。獣どもに襲われる屈辱よりも死を選んだのか、絶望に導かれここに辿り着いた。放っておけば交わることの無い、自分とこの女の道は、少しずつ交差し始めたようだ。
その先にあるものが何であれ、自分が目指すべきはただ一つ。
生ぬるい希望に漬かりきったところで、それを壊してやればいい。
今は穏やかな表情で眠るこの女が、どんな絶望を見せてくれるのかと、フッと笑顔がこぼれる。冷たく冴え渡るそれは、秀麗であるが故に見るもの全てに恐怖を与えるものでしかない。
女を抱えたまま、男はゆっくりと歩き始めた。